[フリースタイルあばりあみ]について

 「あばり」は網をつくるために用いる道具です。網で漁をするところでは、国や地域だけでなく時代を越えて用いられています。もちろん現代の日本でも使われています。網をつくる機会が少なくなってしまっても、破れた網の補修に使われて続けています。

 この「あばり」を用いて、色々な素材でつくりたいものをつくるのが「フリースタイルあばりあみ」です。つくりたいものの大きさや形を確認しながら、一目ずつ糸を結びます。結び方は一種類だけです。個々の制作者の工夫を反映しやすく、それぞれの制作意図や個性があらわれやすいところが魅力です。「あばり」と糸さえあれば、いつでもどこでもつくれます。

 

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 私が「あばり」を用いた網のつくり方をはじめて教わったのは、腰機の調査に訪れたラオスで、1999年のことでした。東南アジアや中国西南部でよく用いられる網のつくり方で、日本ではガラスの浮き球に糸をかけるのに用いられます。結び目が動くことが特徴で、編んだ後にも微調整できることから、球形を隙間なく閉じ込めるにはぴったりです。

 麻、もめん、再生繊維、針金などいろいろな素材の糸でつくれます。張りのある素材と相性が良いです。不揃いの目も、均一にそろった目も、平等に作品に味を与えます。袋物からアクセサリー、グリーンカーテン用の網まで、様々な用途のものをつくることができます。

 「あばり」で網をつくる技法が現在だんだんと忘れ去られていることに、危惧を感じています。こんなに単純で自由度の高い技法を途絶えさせてしまうことは、人類にとって大きな損失であると思います。「フリースタイルあばりあみ」を、少なくともかぎ針編みと同じくらい普及させることを目標に、活動を続けています。活動を始めた2008年から、ワークショップなどで多くの方に直接伝えてきました。日本語/英語併記で出版した冊子「新田恭子のフリースタイルあばりあみ」を通して、私が直接会えない方々へも普及を広げたいと考ています。(現在、作品展/ワークショップ招聘団体を募集中です!)

 

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 20113月、東日本大震災がおこりました。普段は恵みを与えてくれる海からの津波が、人々の暮らしを破壊したことに衝撃を受けました。1995年の阪神淡路大震災で実家が被災した時に多くの方々に助けていただいたことを思い出し、自分のできることで被災された方々のお役にたつことをしようと決意して、機会が訪れるのを待ちました。20153月に福島県の「いわき市暮らしの伝承郷」で「海を編む、美を編むーあばりで編んだ いわきの民具と新田恭子作品展」の開催をきっかけにして、少しずつですが被災地での活動をはじめています。

 

ヒツジパレット2015紹介動画中に「フリースタイルあばりあみ」ワークショップシーン(7:23~)が登場しています。

https://youtu.be/MjCh368xqt8